尿路感染症や気管支炎にクラビットの処方は時代遅れ?アメリカの考え方は
気管支炎や尿路感染症は、飛び入りの外来でみられる症例ナンバー1,2を争う疾患かと思います。
もちろん、ゴミ箱診断※も含めてですが。
※「ゴミ箱診断」…はっきりと確定診断はつけられないが、パット見の雰囲気などでつけられる病名。部下が咳をし鼻水をタラタラ流すのを見て、上司が「君、風邪でしょ」というのと何ら変わらない。
大体は解熱薬や鎮咳薬など、対症療法で済ませるのですが、患者側の「抗生物質も貰えませんか」という謎の希望や医療者側の「二次感染が怖い」という謎の不安などで、抗生剤を併せて処方することがあります。
その際、レボフロキサシン(クラビット®)はかなりの頻度で処方されますが、最近アマリカでこんな提言がでました。
副鼻腔炎や気管支炎にフルオロキノロン系薬はNG|医療ニュース|Medical Tribune
米食品医薬品局(FDA)は5月12日,フルオロキノロン系薬に関する安全性情報を発出した。副鼻腔炎や気管支炎,合併症を伴わない尿路感染症の治療で,他に治療選択肢がない場合を除いて,重篤な副作用のリスクがベネフィットを上回るため,フルオロキノロン系薬の全身投与(経口薬または注射薬の使用)は行うべきではないとするFDAの見解が示された。
筋や関節の疼痛、中枢神経障害の副作用が認められるため、フルオロキノロンは他の治療選択肢がない場合に用いるべきで、むやみやたらと処方されるべきではない、とのFDAからの提案でした。
セフェム系やペニシリン系は1日3回の内服が多いの対して、レボフロキサシンは1日1回で済むので、患者のコンプライアンスを考えると出すなら後者を、と考えるのだけど・・・
じゃあ何を出すんだよ、とツッコミたくなる記事ですが、要するにそういった軽微な感染症に抗生剤は必要ないということですね。
感染症に重症化のリスクは常にあり、抗生剤を飲んだからといってすべて予防できるものではありません。
患者には一見申し訳ないように思うけれど、点で見るのではなく、翌日、3日後などのフォローで症状を線にして診ていくのが、感染症では特に大事なように思います(細菌性髄膜炎などの例外は除く)。
万が一の副作用が起こったときに治療薬の妥当性が検証されるとなれば、より一層抗生剤の処方には慎重になっていくべきですね。
補足:クラビットの500mgは大きすぎて、うまく飲み込めない