『崖の上のポニョ』が、震災以来2回目の金曜ロードショーで放映されて改めて感じること
あの2013年の東日本大震災が起こった後から、津波の映像に関しては色々な配慮をされるようになりました。
震災の映像は極力使われなくなり、台風などで津波の放送をする場合は、
「これから津波の映像が流れます。ストレスを感じる方はご視聴をお控えください。」
そんなテロップが流れるようになりました。
しかし、2008年に公開され、2010年に金曜ロードショーに初登場した『崖の上のポニョ』は、ポニョの地上への登場シーンで津波が街を襲うシーンがあるにも関わらず、震災2年後の2015年にも放映され、そして今回、2019年にも再度公開されました。
これに関しては当時、
「津波で車や船が流される映像を見ていてつらい」
「あの波の中、海の近くを車で運転するなんて非常識だ」
「何mも水位が上がって、どれだけの人が死んだんだ」
など、一部で批判がみられました。
実際、津波で流されるのを目の当たりにした人は、PTSD※によって、震災の映像がフラッシュバックし、気分が悪くなる方もいるかもしれません。
※PTSD(Post Traumatic Stress Disorder;心的外傷後ストレス障害)・・・
2016年 早稲田大学の論文では、東日本大震災から2年後に福島県の仮設住宅で暮らす人々に対してアンケート式に行った研究で、PTSDの発症を疑うカットオフ値を上回った人が実に62%に見られました。被災した人達だけでなく、救助・復興に携わった人も合わせると、相当な数の心的ストレスを抱えた方がいたと思われます。
長期間・発作的に症状が現れるにも関わらず、なかなか他人に理解されない、難しい病気です。
しかしポニョを最後まで見てみると、あのワンシーンのみでこの映画自体を批判するのは、違うと思うんです。
『崖の上のポニョ』は、5歳の男の子宗介が見た景色を、そのまま反映したような柔らかい絵のタッチがとても良い雰囲気で好きです
その中であの津波のシーンは、ポニョの宗介に対する一途な想いを表現しているに過ぎず、決して自然の力に抗えず死んでいく人間を描きたいわけでも、非常識な行動を起こす人間を非難したいわけでもないんです。
この映画を見て「震災」をキーワードに批判するのは、科捜研の女で「殺人」をキーワードに批判するのと同じことだと思います。
補足:そもそもこの映画が面白いのか、と問われると…紅の豚の方が好みかな。しかしエンドロールで一人ひとりの名前のヨコに、かわいい絵が描かれてるのは個人的に好きです(´ε` )