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医師の選んだ、受けたくない検査とは?大腸カメラは辛いけど大事!

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病院で受けるべき検査とは?

病院に来ると、主訴や身体所見に応じて様々な検査を受けさせられる。また、健診や人間ドックも受ける内容は違えど、素人には本当に必要なのか判断し難いものです。

そんな中、”NEWSポストセブン”で「医師200人に聞いた、受けたくない検査アンケート」という記事が載ったので、コメントしたいと思います。

この記事では、受けたい検査、受けたくない検査をランキング形式で紹介しています。

■受けたくない・受ける必要のない検査

1位:腫瘍マーカー検査
1位:胃バリウム検査
3位:大腸内視鏡検査
4位:PET検査
4位:CT検査

■受けたい・受ける必要のある検査

1位:血液検査
2位:胃内視鏡検査
3位:大腸内視鏡検査
4位:上部消化管内視鏡検査
5位:PET検査

(原文まま)

腫瘍マーカーは癌を疑う人に測ってこそ価値がある

腫瘍マーカーが堂々の1位ですが、以前から健診などで測ることに疑問を呈されている項目です。

CEA, CA19-9, PSA, CYFRAなどがよく測定されますが、多くは信頼性に乏しく、癌が無いのに上昇するならまだしも、癌があっても上がるとは限らない、という「何の為に測っているのか」状態です。

ただ、前立腺がんのスクリーニングとして、PSAは感度・特異度ともに優れているため、男である私は40代になったら健診で測定しようかな、と思っています。

腫瘍マーカーは本来、癌の補助診断に用いるもので、他の検査で「癌があるかもしれない」という”検査前確率"が高い状態で行わないと、信頼性もガタ落ちです。そのため、健診やドックだけでなく、一般外来でも測るタイミングは熟考する必要があります。

 

最近の主流は胃カメラバリウム

 他には、胃カメラバリウム検査大腸カメラなど、消化器内科系がどちらにもランクインしています。

これは消化器内科医として実感しますが

胃カメラ、入るときオエッてしんどかった」と言う患者さんと同じくらい

「胃のバリウム検査、お腹が張って辛かった」と言われる方は多いように思います。

というのも胃バリウム検査は、割と飲みにくいバリウムをゴクゴク飲みながら、体を左右に傾けられたり、お腹を押さえられたりと、胃カメラより絶対に楽!と言えるほどのものではありません。

加えて、バリウム検査はレントゲンで食道や胃の凹凸を見ているだけなのに比べて、胃カメラカメラで直接食道~胃~十二指腸を観察できるため、完全な上位互換の検査です。

(一部、胃や食道の通過性や、壁の硬さなどを評価するのにはバリウム検査に軍配が挙がります)

というわけで、よっぽど嫌な思い出がない人以外は、健診で胃カメラを選択されることをおすすめします。

以前は、覚醒した状態で太いスコープを口から入れていましたが、最近は鎮静剤を使ったり、経鼻内視鏡(鼻から入れる5ミリ程度の細いスコープ)で行ったりと、「できるだけ受ける人の負担が少ない検査」を目指す傾向にあるため、より患者目線な病院・診療所を探してみるのもアリです。

 

大腸内視鏡検査は受けたい/受けたくない両方にランクイン

大腸カメラに関しては今回記事を書こうと思った一番の項目です。

まず、お尻から13ミリという親指サイズのスコープを入れるという恐怖は、多くの人の未体験ゾーンでそもそも敷居が高そうです。

具体的な辛いポイントとしては、①1.5~2Lのあまり美味しくない下剤を飲まされるという苦行 ②腸の中でカメラがツッパった時の痛み です。

検査前は下剤を飲む+便を出し続けて、薄い黄色になるまで追加で下剤を飲まされたりするので、腸の動きが悪いとほんとに辛いです。高齢者には、ある程度のところで許容することもありますが、便が出ていないとカメラで見てもほとんど観察できず、それこそ意味のない検査になってしまうので、頑張って飲んでほしいところです。

記事内では、

内視鏡検査は、熟練の専門医が行えば短時間のうちにスムーズに終わり、苦痛もほとんどありません。しかし、医師の腕によっては苦しんだり、時間がかかってしまったりすることもある。“ピンキリ”だということを医師たちが知っているからこその結果だと思います」

とジャーナリストの村上和巳さんが解説されていましたが、ここだけ弁明させてください。

確かに、大腸カメラは医師の技量によって痛みが強かったり、観察・処置に時間がかかることは往々にしてあります。これは胃カメラと比べて難しく、技量が必要な検査だからです。

しかし!しかしです。術者側のファクターだけでなく、検査を受ける側のファクターも少なからずあります。

検査前に、「挿入が難しい and/or 痛がるかもしれないな…」という特徴のある方を3つ挙げます。
腹部の手術歴あり(腸の癒着で挿入が難しく、痛みを伴いやすい)
肥満あり(腸が縦横無尽に動くため挿入が難しい)
高齢(腸が伸びやすいため挿入が難しい)
若年男性(痛みに対し敏感)

受ける側には予防しようのないリスクファクターですが…特に盲腸(虫垂炎)、帝王切開など、腹部の手術歴がある人は穿孔などの合併症リスクも高いため、術者側も、こういう人達こそ慎重に検査を行うように努めています。

 

PET-CTも、まだ見ぬ癌を探すための検査ではない

 最後にPET-CTですが、これも受けるべき/受けないべき検査両方にランクインしています。

人間ドックを想定した場合、これは不要な検査と言うべきでしょう。腫瘍マーカーから繰り返しになりますが、PET-CTは本来「癌が存在する」とわかっている状態で、転移などの存在をするための補助診断に位置する検査です。

「この人の胃がんを治療したいけど、他に転移がないだろうか?」と、転移の有無で治療方針が変わってくる場合には、積極的に行っても良い検査だと考えます。

 

なので、健康な人にPET-CTを行うのは、偽陽性(癌ではないのに検査陽性と出る確率)を増やします。それによる患者の心理的な負担や、さらなる検査の身体的・経済的負担を考えると、メリット オンリーの検査ではありません。

(ちなみにPET-CTの偽陽性は、炎症などで広く生じます。肺炎、腸炎慢性甲状腺炎子宮筋腫良性腫瘍 等…)

 

まとめ

 さすが医師にアンケートを取っただけあって、内視鏡検査の重要性について説得力のある記事で良かったです。

健診やドックであれば、あくまで”スクリーニング”としての検査を優先させるべきで、腫瘍マーカーやPET-CTという検査は適切でない、という考えです。

セルフメディケーションという言葉もありますが、日々の健康状態をチェックするためにも、健康診断に1年に1回は行っておくことをおすすめします。万が一その病院に搬送された時には、そのデータが役に立ちますしね。